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就業規則の作り方 その16「賃金規程〜 割増賃金規定の詳細と賞与・ 退職金その他」

賃金規程〜
割増賃金規定の詳細と賞与・ 退職金その他


労働基準法では休憩時間を除いて日に8時間、週に40時間を法定労働時間として定めていますので上記の法定労働時間を超えて勤務させる場合は通常の賃金に加えて割増賃金を支払うよう義務づけられています。
会社は従業員が法定労働時間を超えて働いた時間外労働に対して、通常の賃金より割増した金額を支払わねばなりません。割り増す率は働いた時間数の合計や休日・深夜労働により変動します。これを法定割増賃金率といいます。

 

■割増賃金率の引き上げ

2010年の労働基準法の改正により、1か月に60時間を超える時間外労働に対して大企業には50%の割増賃金率が課せられ、中小企業には25%のままの猶予措置が設定されました。
その後の2019年4月に施行された働き方改革関連法により、中小企業の猶予措置の終了が決定され2023年4月より月60時間を超える時間外労働に対して中小企業にも50%の割増賃金率が適用されることになります。

 
  法定時間外労働(1日8時間・週40時間を超える労働時間)
   60時間以下    60時間超
 大企業      25%     50%
 中小企業      25%     25%
        
 
  
  
                      ↓
                50%(2023年4月より)
●中小企業の定義
下表のうち、いずれかに該当する場合は中小企業となります。なお、この判断は事業所単位ではなく、企業(法人や個人事業主)単位で判断されます。
2023年4月1日前までは、下記に該当する中小企業は1カ月60時間を超える時間外労働に対して、通常の賃金の50%以上の率で計算した割増賃金を支払う義務はないとされています。

           
       業種 資本金の額または出資の総額       常時使用する労働者数
     小売業            5,000万円以下                50人以下
   サービス業            5,000万円以下               100人以下 
     卸売業               1億円以下               100人以下
    上記以外               3億円以下               300人以下
 

■代替休暇の付与

代替休暇とは、法定時間外労働が1カ月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、時間外労働60時間の前と後の差額の割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇を付与することで賃金の支払いを免れる制度の事をいいます。
代替休暇は法定時間外労働が1か月あたり60時間を超える場合に利用できる制度として2010年4月1日より大企業に適用されていますが、2023年4月1日からは中小企業も利用が可能になります。
代替休暇を取得するかどうかは労働者の意向確認や取得日の決定方法、割増賃金の支払日など協定で決めておく必要があります。就業規則にもその旨を記載しておかなければなりません。

■割増賃金引き上げの努力義務

1カ月の時間外労働の限度時間は45時間とされており、この時間を超えて労働させる場合には、あらかじめ労使で特別条項付きの時間外労働協定を締結する必要があります。
 
1.特別条項付きの時間外労働協定において、月45時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を
  定めること
2.1の率は法定割増賃金率である25%を超える率とするように努めること
3.45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めること

これに関しては、企業規模にかかわらず適用され、中小企業の猶予はありません。
中小企業でも、1カ月45時間以上の時間外労働に対しては、上記対応を取らなければなら
ないということです。時間外労働時間と割増賃金率の関係を図にすると、次のようになります。

●大企業の場合


 0           45時間             60時間
     25% 25%を超える率(努力義務)           50%
  

●中小企業の場合

0             45時間
     25% 25%を超える率(努力義務)
 
●長時間労働に対する割増賃金率を時間外労働の規定に盛り込んだ例(大企業) 

 第○条(時間外労働)
 1.社員が法定労働時間を超え、または法定休日・深夜に労働した場合は、 次の計算式により手当を支給する。
(1)1カ月に45時間以内の時間外手当    
     1時間当たりの算定基準額×1.25×法定時間外勤務時間数
(2)1カ月に45時間を超え60時間以内の時間外手当    
     1時間当たりの算定基準額×1.30×法定時間外勤務時間数
(3)1カ月に60時間を超えた時間分の時間外手当
     1時間当たりの算定基準額×1.50×法定時間外勤務時間数
(4)深夜勤務手当     1時間当たりの算定基準額×0.25×深夜勤務時間数
(5)休日勤務手当     1時間当たりの算定基準額×1.35×休日勤務時間数

2.時間外勤務または休日勤務が深夜に及んだ場合は、深夜勤務手当を加算する。
3.法定労働時間を超えて勤務した時間が60時間を超えたときは、労使協定に定めるところにより、
年次有給休暇を与えることができる。
 
●長時間労働に対する割増賃金率を時間外労働の規定に盛り込んだ例(中小企業)
 
第○条(時間外労働)
1.社員が法定労働時間を超え、または法定休日・深夜に労働した場合は、次の計算式により手当を支給する。  
(1)1カ月に45時間以内の時間外手当   
    1時間当たりの算定基準額×1.25×法定時間外勤務時間数  
(2)1カ月に45時間を超えた時間分の時間外手当   
    1時間当たりの算定基準額×1.30×法定時間外勤務時間数  
(3)深夜勤務手当
    1時間当たりの算定基準額×0.25×深夜勤務時間数  
(4)休日勤務手当   
    1時間当たりの算定基準額×1.35×休日勤務時間数
 2.時間外勤務または休日勤務が深夜に及んだ場合は、深夜勤務手当を加算する。
●長時間労働に対する割増賃金率を独立させて規定した例(大企業)

 第○条(長時間労働に対する割増賃金率)
1.社員が1カ月に45時間を超える時間外労働をした場合、45時間を超えた時間外労働時間に対する割増賃金率は30%とする。ただし、社員の時間外労働時間が1カ月に60時間を超えた場合には、その超えた部分の時間外労働に対する割増賃金率は50%とする。
2.法定労働時間を超えて勤務した時間が60時間を超えたときは、労使協定に定めるところにより、
年次有給休暇を与えることができる。
  
●長時間労働に対する割増賃金率を独立させて規定した例(中小企業)
第○条(長時間労働に対する割増賃金率)  
社員が1カ月に45時間を超える時間外労働をした場合、45時間を超えた時間外労働時間に対する割増賃金率は30%とする。
 

■その他規定事項

●賃金の改定
賃金の改定時期、対象者などについて規定します。また、人事考課の上で降級の可能性がある場合については、その可能性についても触れておきます。
就業規則に、人事考課の評価が悪かった社員に対して降級する旨が規定されていない場合は、降級を行うことができなくなります。
 
第○条(賃金の改定)
1.賃金の改定は、毎年4月分給与において行う。ただし、経営状態やその他やむを得ない事情がある場合には、予告の上賃金改定の時期をずらし、または改定しないことがある。
2.改定の対象となる査定期間は、前年4月1日から当年3月31日までとする。
3.職務に照らし合わせた人事考課により特に不良と認められた場合には、降級の上、賃金を下げることがある。
4.前年10月1日以後に採用した者、または改定時期に休職中の者に関して は、賃金の改定は行わない。
5.前項の休職中の者に関しては、復職後に賃金の改定を行う。
6.会社に特に功労のあった者、優秀な成績を収めた者に対しては、期の途中であっても臨時に賃金の改定 を行う場合がある。
 
●賞与
賞与は、引き下げが容易でない通常の賃金とは異なり、支払うも支払わないも会社の自由となります。会社の経営状態によっては支給しない旨を規定しておくことが重要です。
 

第○条(賞与)
1.賞与は会社の業績に応じて6月と12月の年2回支給する。ただし、会社の業績など経営上支障がある場合は支給時期を変更する、または支給しないことがある。
2.支給対象者は、対象となる期間のすべての期間について在籍し、かつ支給日当日に在籍している者とする。ただし、対象となる期間に制裁の措置を受けた者に関しては、原則として支給しない。
3.支給対象期間は次のとおりとする。
 
     支給月           対象となる期間
      6月       10月1日〜3月31日
        12月          4月1日〜9月30日

4.支給額については、会社の業績および社員の人事考課に基づき別途定める方法により計算する。
5.対象期間中に遅刻、欠勤、休職等で一部の期間、在籍していない場合は、在籍月数に応じて月割計算した金額を支給する。
●退職金
退職金については、別途定める旨を規定し、別途「退職金規定」を作成します。
退職金も、賞与と同様に支払うも支払わないも会社の任意となりますが、定める場合は支給対象者や勤続年数の明確化、中途退職者の退職金などの規定しておくことが大切です。
会社の支払い能力に沿い、将来の状況を勘案したものにしておかなければ、後々トラブルになる事もありますので注意が必要です。
 
第○条(退職金)  退職金については、別途定める退職金規定によるところとする。
 
●不正受給の返還
社員が不正に通勤手当を受給していた場合に、就業規則違反等を理由に懲戒処分を行うことが考えられます。不正受給が発覚した際の返還請求期間や懲戒処分の内容の規定を設けておきましょう。
 
第○条(不正受給の返還)  
社員が、虚偽の申請などにより会社から賃金を受給した場合には、その額を直ちに返還させた上で、必要に応じて懲戒処分を行うことがある。
 
●賃金規程の改定
 賃金規定は就業規則の一部になりますので新たに作成する場合や変更する際も労働基準監督署への届け出が必要になります。労働者にとって不利益な内容に変更する場合は合理性が求められます。

第○条(賃金規程の改定)  
社会一般の賃金水準の変動や会社に業績の変動などの理由によって、本規定および表の賃金表の改定を行うことがある。



 
 
2022/12/27

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