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就業規則の作り方 その8「人事異動・休職・復職」

人事異動・休職・復職

■人事異動(配転・出向・転籍)

人事異動とは会社の命令によって従業員の配置や地位、勤務条件の変更をすることを言います。
就業規則に異動に関する規定さえあれば、原則的に、会社は社員の個別の同意なしに配置転換を命令する権利を有するということになります。
配転とは従業員の配置の変更であり、職務内容または、勤務地が相当の長期間にわたって変更されることを言います。

例えば同じ会社内で東京支店から大阪支店へ勤務場所が変わる転勤は配転(配置転換)にあたります。

               

社員を異動させる可能性がある場合には、就業規則にこれを規定しておく必要があります。
ただし、社員との間に職種や勤務地に関する限定的特約の合意がある場合は、社員の同意なしに配置転換命令を出すわけにはいきません。また、不当な目的を持った異動はトラブルになった際は権利濫用とされ、無効となります。

第○条(配置転換)
1.会社は、業務の都合により必要がある場合は、社員に配置転換、勤務場 所の変更、役職の任免、または担当業務以外の業務を行わせることができる。

2.前項の命令を受けた社員は、正当な理由がない限り、これに従わなければならない。

■出向

出向とは、出向元である企業との雇用契約を結んだまま、別の企業(出向先企業)とも雇用契約を結んで出向先企業の指揮命令の下で働くことを指し、出向元と出向先の2社と雇用契約を結んだ状態となります。出向と呼ばれるものには在籍出向と転籍出向の2つがあります。
 
        
 
在籍出向とは、出向元との雇用契約を結んだまま、さらに出向先とも契約を結ぶことです。
ある期間、出向元で勤務した後に出向元に復帰することを前提としています。
就業規則に規定があれば、会社はこれを命じることができます。出向元と出向先のどちらの就業規則に従うかは労働時間や休日などの勤務に関する事柄は出向先、その他の事柄は出向元の就業規則が適用されるケースが多くみられます。
また、出向によって賃金や休日などの労働条件が変更になるなど、特に社員の不利益に変更になるときには、本人の同意を得ることが必要です。
 第○条(出向)
1.会社は、社員に対して、関連企業、取引企業などに対して出向を命じることがある。
2.前項の命令を受けた社員は、正当な理由がない限り、これに従わなければならない。
3.出向期間については勤続年数に通算する。


転籍出向とは、出向元との雇用関係を終了させて出向先と新たに契約を結ぶことです。
出向元との雇用契約が終了することになりますから、社員本人の同意が必要となります。
第○条(転籍)
1.会社は、社員に対して、関連企業、取引企業などへの転籍を命じることがある。
2.前項の場合、社員の同意を得るものとする。
3.社員を転籍させるときは、退職金規定に基づく退職金を支払う。

 ■休職

休職とは、労働者が在職中に労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に一定期間の療養の機会を与えることを言います。
休職制度は法律で義務付けられたものではありませんので、定めるかどうかは会社の任意になります。
社員が休職するときには「休職命令書」のような書類を作成し、休職扱いにする期限を明確化しておきましょう。これにより休職した社員が休職可能な期間を把握することができます。

第○条(休職)
会社は、社員が次の各号の一に該当するときは休職を命じる。  
(1)業務外の傷病による欠勤が連続1カ月以上にわたったとき  
(2)_家事の都合、その他社員のやむをえない事由により1カ月以上欠勤したとき  
(3)公の職務につき、業務に支障があるとき  
(4)刑事事件に関し起訴され、相当期間就労できないと認められるとき  
(5)会社の命により出向したとき  
(6)前各号のほか、特別な事情により休職させることを必要としたとき

■休職期間

休職期間の設定は会社が任意で定めることが可能となります。
勤続年数によって区分するのが一般的です。健康保険の傷病手当金の支給限度が1年6カ月であることから、1年6カ月を上限とする企業が多くみられます。
また、一度出勤した社員が再び同様の事由で休職したときの休職期間の取り扱いについても規定しておきます。 休職中の社員には、休職期間の満了前に、休職期間が終了する年月日と休職期間が終了したら退職となる旨の通知をしておきましょう。会社として何もしないで退職させることは、トラブルの元になります。連絡を取るなどして、その状態を把握しておくことも重要です。

第○条(休職期間)
1.休職期間は次のとおりとする。   
(1)傷病による休職の場合

■休職期間の取り扱い

休職期間の賃金などの労働条件の取り扱い、社会保険料などの徴収方法について明確化します。
賃金については、ノーワークノーペイの原則に従い無給で構いませんが、社会保険料、厚生年金保険料などは休職期間中であっても加入しなければなりませんので、どのように支払うかを決めておく必要があります。私傷病による休職では、要件を満たせば健康保険から傷病手当金が支給されます。ただし、傷病手当金など国から支給される金銭から、社会保険料などを控除することはできません。

第○条(休職期間の取り扱い)
1.休職期間については無給とする。
2.賞与および昇給については、対象期間から休職期間を除いて控除する。
3.社会保険料その他社員が負担すべきものがあるときは、社員は毎月末日までに会社が指定する額を会社が指定す
   る口座に振り込むものとする。

■復職

休職している社員が復職を希望しているときの手続きや休職期間満了時の取り扱いについて規定します。
例えば私傷病で休職していた場合、仮に業務に耐えられない健康状態であれば、労災事故が起こる原因にもなりかねません。従業員の希望を鵜吞みにし復職させてしまうと、かえって病状を悪化させる恐れや現場作業では労災事故が起こる原因にもなりかねませんので、会社は復職させるか吟味した上で、医師の診断を求めるなどで慎重に判断すべきと考えます。

第○条(復職)
1.休職の事由が消滅し通常の勤務ができるようになった場合は、会社が指定した復職日に休職前の職務に復職さ
  せる。ただし、復職前の職務に復職させることができない場合は、他の職務に配置する場合がある。社員は正
  当な事由なくこれを拒否することはできない。
2.休職事由が消滅したときは、速やかに会社に届け出なければならない。
3.傷病休職者が復職の請求をした場合は、医師の診断書に基づき会社が判断する。また、会社が指定する医師の診
  断を求めることがある。
4.休職期間が満了しても休職事由が消滅しない場合は、休職期間の満了をもって退職とする。
5.休職期間が満了し出社できる状態であるにもかかわらず、正当な理由なく会社の指定した日に出社しない場合
   は、その翌日をもって退職とする
 
◆復職を希望した社員が休職前の職務に就くことが困難な場合、会社の規模やその職務によっては他の職務に配置するまでの対応は不要と判断される場合があります。
2022/11/28

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